2017年にメジャーレーベルとサインし、年明けそうそうデビューアルバムのリリースが発表されたNBA YoungBoy。法的トラブルによる遅延などもありましたが4月に無事メジャーデビューを果たしました。その後はものすごい勢いでリリースを重ね、最終的に6枚のプロジェクトを発表しました。
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2018年
10th : Until Death Call My Name (2018/4/27) / Reloaded (2018/6/29)
直訳すると「死が我が名を呼ぶまで」といういかにもギャングスタなタイトルのデビューアルバムです。BirdmanとFutureが客演で参加してます。(最初Traumatizedという曲にLil Babyが参加してたんですがいつの間にか消えてました)
GenieやOutside Todayなどのヒット曲が多く収録されているので、入門にはちょうどいい作品だと思います。
また、Reloaded版も2ヶ月後に発表されました。追加の曲にはOffsetとLil Uzi Vertが参加しています。
20曲中8曲がMVになってますがそのうち7曲が再生回数1億超えです。NBA YoungBoyといえばYouTubeでの人気が有名ですが、この時期からそうだったと思います。この年は2週に1本くらいのペースでMVや新曲がYouTubeにドロップされてた気がします。
Overdose
Gucci GangでおなじみのBigheadプロデュースです。Hookなしで駆け抜けるハードな曲です。
「F*ck that Twitter beefin’, you want beef, I pull up where you sleep (インターネットビーフなんかクソだ、ビーフしたいならお前の家に乗り込んでやるよ)」とか、血の気の多い曲です。
Diamond Teeth Samurai
これまたハードな曲で、Lil WayneのTha Block is HotのHookをまんまサンプリングしています。同じルイジアナ州の出身で、若くしてスターになったという点から自分と重ねる部分もあったんじゃないかと思います。また、リリックに固有名詞の多い曲で、2Pacや50Centを引き合いに出してセルフボーストしてます。
「Me and Meek Mill watchin’ movies in Rick Ross’ mansion (Meek Millと一緒にRick Rossの豪邸で映画を見てる)」これめっちゃ羨ましいですね
Outside Today
YBの代表曲です。ラップうますぎて新境地入ってます。そしてこのころからめちゃくちゃデカイ家に住んでます
「Tryna hide from the camera, I ain’t goin’ outside today(カメラを避けようとしているんだ、今日は外に出ない)」タイトルからして家から出る曲かと思いきや家から出ない曲です。メディアや監視カメラの目を避けるってことだと思います。
「Face every problem all by my lonely (どんな問題にも自分の力だけで向き合うんだ)」地味にSpeaker KnockerzのLonelyのリリックを引用してるっぽいのが個人的にニヤリとするポイントです
ライブ動画もぜひ見てください。大合唱です。
Astronaut Kid
今までと明らかにテイストが異なるMVです。宇宙服着てるとまだまだ少年感ありますね
「I shot to the top just like I’m a rocket(ロケットのようにてっぺんまで飛び出すんだ)」など、宇宙に絡めた歌詞を書いてます
We Poppin
ノスタルジックな気持ちになる曲です。Birdmanのゆったりしたラップもいい感じ。
ちなみにYBとBirdmanは結構コラボ曲あってRideやCap Talkという曲もおすすめです。この頃から2人でアルバム出すって話でてたのに結局リリースされたんは2021年末でした。
余談ですがDrumma Boyのプロデューサータグを聞くとWaka FlockaのNo Handsを思い出します
Solar Eclipse
数ある哀愁系の曲でも特に好きな曲です。英語わからなくてもメロだけで泣けます。YBが母親もしくは祖母に捧げるように歌う曲です。
「I hope you love me as much as I love you / I ain’t mean to break your heart, but baby, that’s what thugs do / Nothing in the world, baby I wouldn’t do for you / If I die right now it’s so much that I would lose (俺があなたを愛するのと同じくらい愛してくれていると願っているよ / あなたの気持ちを傷つける気はなかったんだ。でもそれはこの生き方故のことなんだ/ あなたのためにならなんでもする / もし俺が今死んだなら俺はとても多くのものを失ってしまうんだ」
Through The Storm
サビがめちゃくちゃいいです。リリックは端的にいうと苦しい日々を乗り越えて金持ちになったって話です
Genie
YBの曲で最もMVの再生回数が多い曲で、これ書いてる時点で3.7億再生です。
タイトルのGenieはランプの精のことみたいです。まさにペインソングです。
リリックでは他人の忠誠心を信じられないという気持ちを歌っています。
「Don’t tell me that you love me if you ain’t gon’ die for me, yeah(俺のために死ねないのなら、愛しているだなんて言わないでくれ)」
11th : Master the Day of Judgement (2018/5/19)
アルバムでて3週間後にいきなりドロップされたミックステープです。必聴作品ではないですがたまに聞き返すとおもしろい作品です。
Akbar
かなり感情入ったラップしてます。オススメ
Akbarはイスラム教とヒンディー教に関係する人のことのようです。リリックは難しくてよくわからないんですが、Hoodでのギャングスタとしての生き方について歌っています。
What You Know (feat. Lil Uzi Vert)
サブスクに入ってない曲です。前の作品でもリルウジ参加してましたがこっちの曲の方が好きです。落ち着いた感じでラップしてるのが渋いっす
12th : Decided (2018/9/7)
前作から3枚のEPをリリースしたあとにリリースされた12枚目のプロジェクトです。(EPについては次の項目で紹介します)
このミックステープでは歌物の曲が多く収録されています。短めのミックステープですがバラエティに富んだ作品となっており、かなりおすすめの作品です。客演はTrippie Reddが参加してます。このころは仲良かったですよね〜
Demon Seed
Big Dumpという仲間をドライブバイによって失ってしまったことについて歌っています。
No Love
めずらしいタイプのビートです。ドラマチックというか。いい意味でらしくない曲でおもしろいです。オススメ
No Mentions
MVにTrippie Reddが出演してますが彼が参加している曲は別の曲です。
叫ぶような曲で、この曲もめちゃくちゃかっこいいです。
「I feel I’m right, they say that I been wrong my whole life / Thought that was life, but since it’s not, I keep my soul tight (俺は俺が正しいと思っている。奴らは俺の全てが間違っていると言っている。 / そういう人生だと思っていたけど、それは正しくないから、気持ちを強く持ち続ける)」みたいに、不意にいいこと言ってきますね
13th : 4Respect 4Freedom 4Loyalty 4WhatImportant (2018/9/14)
このアルバムは4週連続でリリースされた4曲入りのEP4枚をひとまとめにした作品です。
まず1枚目が4Respectで、8/24にリリースされました。このEPでは全曲にKevin Gatesをフィーチャーしています。Kevin Gatesはバトンルージュを代表するラッパーで、YoungBoyの先輩に当たります。Outside Todayなどの曲でもネームドロップしていることから、Respectしていることが伺えます。
2枚目は4Freedomです。この作品は8/30にリリースされました。
3枚目は4Loyaltyです。この作品は9/6にリリースされました。このEPでは3曲にQuando Rondoをフィーチャーしています。Quando Rondoはジョージア州サバンナ出身のラッパーで、NBAレーベルとサインしています。現在でもYBの右腕的存在です。
そしてこれらの3枚のEPと追加の4曲をパッケージしたアルバムが本作になります。
アルバム全体を通して感情的なリリックが多いです。自分自身の置かれた現実や、他人から見られる自分の姿について、怒りや悲しみを歌っています。
Dropout
4WhatImportantからの曲です。攻撃的な曲です。特定の何かに怒っているというより自棄になって当たり散らしてく感じです。
Can’t Be Saved
4WhatImportantからの曲です。かなり悲痛な言葉をスピットしています。注目されるが故の問題があるんでしょうね
「now I can’t be saved / No matter what I do they say that I’m wrong (俺は救いようがないんだ / 何をしようとしても、間違っていると避難されるんだ)」とNo Mentionsの時と真逆のことを言っています。気持ちが潰されかかっているのを感じます。
I Am Who They Say I Am (feat. Kevin Gates & Quando Rondo)
めっちゃ好きです。まずビートがいい。AshantiのRain on Meという曲をサンプリングしてます。ビデオもかっこいい。
4Respectでは4曲ともバトンルージュのスーパースターであるKevin Gatesをフィーチャーしてますがどれも渋くていい曲です。Kevin Gatesマジでイケてますよね〜
タイトルの通りで、他人の評価に対して歌っています。「They say I’m pussy and they say I’m fake but I say / I’m all who you say I am (やつらは俺が腰抜けだと言うし、奴らは俺が偽物だという。だけど俺は言う / 『おれはまさにお前が言っているようなやつなんだ』)」と、様々な決めつけやイメージに対して、否定することなく、それも仕方ないことだという風に受け止めています。
Permanent Scar (feat. Young Thug & Quando Rondo)
4Loyaltyからの曲です。メロディ巧者の3人がCardiakとKenny Beats製の暖かみのあるビートで自由にラップしてます。この曲に関してはQuando Rondoが優勝ですね〜
Quandoはいろいろあったので嫌われがちなラッパーですが間違いなく天才です。YoungBoyほど器用じゃないけどやんちゃなビートでのねちっこいアグレッシブなラップや、エモーショナルなビートでのメロディアスなラップに特化してます。ギリギリのところで生きてる人特有のヒリついた空気は彼にしか出せないものがあります。
Drawing Symbols
4Freedomからの曲です。哀愁を超えて、もはや悲しい曲です。リリックでは死を伺わせるようなことも歌っています。
14th : Kane & O-Dog (w/ VL Deck) (2018/10/19)
一月ぶりのリリースはVL Deckとの共作ミックステープです。VL DeckはYoung ScooterのBMG(Black Migo Gang)まわりなので多分アトランタのラッパーです。NBA YoungBoyは地味にBMGのアーティストへの客演が多くて、Young ScooterやRaloの曲にも参加しています。なのでその流れで作成されたミックステープだと思います。
どうやらNBA YoungBoyはYoung Scooterが好きらしく、Young Scooterが毎年何枚もミックステープを出しているのを見て自分も年に最低3枚はリリースすることを目標にしていると語っているのをどこかのインタビューでみたことがあります。
BMG周辺のラッパーはスキルフルではないですが、癖が強い人が多いです。特にRaloとかは一度聞いたら忘れられないと思います。
このミクステ自体はそんな重要でもないですが、ZaytovenなどのアトランタのトラップサウンドでラップするYBは他ではあまり聞けないのでそういう意味ではおもしろい作品です。
The Knowledge
ZaytovenとCassius Jayプロデュースの曲です。騒音のようなVL Deckの後だとYoungBoyがおとなしく聞こえます。
Rain Storm (Ralo feat. NBA YoungBoy)
このミクステ収録ではないですがいい曲なので紹介します。YB色が強いビートにRaloの下手ウマなラップがドハマリしてます。最高です。
15th : Realer (2018/12/20)
リリースラッシュの1年を締めくくるミックステープです。
30分程度と短いですがNBA YoungBoyの中でも特にクオリティが高い作品だと思ってます。ビートは洗練されててドープやしラップも脂ノリまくってて全曲最高です。まさにGangsta RapというべきHardな作品でめちゃくちゃかっこいいのでおすすめです。客演はPliesとLil Babyが参加してます。
Survivor
シリアスなビートの曲です。数多のトラブルがありながらもラップゲームに戻ってくる自身のことを歌っているかと思われます。
「He fell out of love, now he can never trust / They told him lies, he was depressed, they thought he gave it up / He came back like a survivor, yeah / He came back like a survivor, yeah (彼の愛情は冷め、今では誰も信用しない / 奴らは彼に嘘を付き、彼は落ち込んで、諦めただろうと思った / それでも彼はサバイバーのように帰ってきたんだ / 彼はサバイバーのように帰ってきたんだ)」
Slime Belief
ギターの不穏なサウンドが特徴的なビートです。ドラッグディールについて歌っています。
「Can you make it better? Trap out like Griselda」のラインの通り、自分のドラッグディールの能力をグリセルダ・ブランコという人物に例えて、誰よりもドラッグを売りさばくのが得意だとボースティングしています。
Valuable Pain
タイトルの通りのGangsta Painソングです。沁みまくりです。
「I’ma say I’m sorry for all of the shit that I had did / And I’m thankful for that shit that you had done while we was kids / Been puttin’ my soul up in this music and I’m hopin’ that you hear it (俺が今までに行ったすべての悪事について謝りたい / そして俺たちが子供の頃にあなたがしてくれたことすべてに感謝している / 俺の魂をすべてこの音楽に注いでいる。これをあなたが聞いてくれることを願っている)」と歌い出しからいいですよね
「Smokin’ on this Cherry Pie, f*ckin’ your favorite athlete daughter」your favorite athleteはメイウェザーのことでしょうね
38 Heights
爽やか目な曲です。タイトルは「すばらしい時間を過ごす」という意味らしいです。
タイトルの意味の通りで、リリックから前向きな意思を感じられます
「Know why the bullshit comin’ fast, ‘cause I’m livin’ slow (That sound true) / Admit I put my past behind me, but I ain’t let it go (どうしてクソな出来事が次から次にやってくるのかわかるか?だから俺は生き急がないことにするんだ / 過去に背を向けていることはわかっている。だけどそれを手放すことはできない)」
Beam Effect
Beamは銃の照準のことでしょうね。まあそういう曲です。シンプルにかっこいいっす
Dope Lamp
これもめちゃくちゃかっこいいっす。痺れる
I Came Thru
イントロからしてクソいかついです。マジで最高ですね、一番好きな曲かもしれないっす。ラップもビートもビデオも全部完璧です。最強。
「He want smoke, we blow it, make him choke it」このライン上手すぎません?(笑)
まとめ
2018年のUS HIPHOPはLil BabyやTravis Scottとかのリリースもあってめちゃくちゃアツかった記憶がありますがそれでもNBA YoungBoyは圧倒的な量で目立ってた一年でした。長くなりましたが、とにかくこの一年で全米トップクラスのラッパーに上り詰めたことがわかったかと思います。
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